クローズアップ現代 NO.2503

11月29日(木)放送
プーチンは“皇帝”になるか
〜ロシア下院選・大国の行方〜


12月2日のロシア下院議員選挙。主役となっているのは、来年で任期切れとなるプーチン大統領だ。与党の比例代表名簿の1位に名のりをあげ、首相就任を睨むなど、退任後も実権を握り続ける姿勢を鮮明にしている。「プーチン路線継続」の是非を問う形となった選挙だが、与党の圧勝は確実。その背景には、ソビエト連邦崩壊後、自信を喪失したロシア国民が、大国復活を"強い指導者・プーチン"に強く期待しているという実情がある。政権もこうした国民心理を巧みに利用し、プーチン大統領を神格化するような布石を着々と打っている。"プーチン帝国"へと突き進む大国・ロシアの変容を描く。(NO.2503)


スタジオゲスト
中村逸郎さん(筑波大学大学院教授)
HPの番組紹介より引用

「帝政民主主義」(中村逸郎)に驀進中のロシアのお話。
中村氏は著作の主な版元が岩波書店なのだが、
比較的中立的なロシア論を展開されていて、
『ロシア市民』(岩波新書)、
『帝政民主主義国家ロシア』(岩波書店)
の二書は面白かったのでオススメ。
今年の10月に出された
『虚栄の帝国ロシア』(岩波書店)は未読だが、
著者からの内容紹介を読む限り面白そうだ。
氏は良い意味でジャーナリスティック、
あるいはフィールド・ワーク的な
地に足の着いたロシア論を展開されておられる。


しかし、前著の装丁もイマイチだったが、
今回の方は書影を見る限り最悪の部類に入りそう。
表題が白黒赤青黄などの内から二色というのが、
安っぽい、特に講談社の本に多いのだが、
これはそれに近い。
値段も高くなってきて、
装丁のセンスも悪くなってきているが、
彼の書店は大丈夫なのであろうか。


さて、本題であるが、
番組中に「主権民主主義」という訳語を見かけたのだが、
要するにあの主権は国家主権のことだから、
明治時代の「国権論」と「民権論」にならって、
「国権論的〜」か「国権〜」とあててはどうだろうか。
ロシア民衆の生活や社会の状態が
如何に混乱しているかは先の二著に詳しいのだが、
そうした中で慈悲深きツァーリたるプーチンが台頭する。
この社会生活や自治の破綻状況で、
国家と民衆が直結するその様相は、
かつてのソ連時代やファシズムを思い起こさせる。


ファシズム」という言葉はいまや
ある種の罵倒としてしか用いられていないが、
かつては一つの革命思想であった。
政権を獲得したファシズムに限って言えば、
その成立過程は非常に共産主義に似ている。
即ち一つの政党が国家を支配、
あるいは乗っ取ってしまうというもので、
そういう意味では中国の共産党
蒋介石時代の国民党とでは大差が無い。
しかも、国民党はソ連の支援を受けていた事もあって、
一時期、欧米諸国から赤化政権と目されていた。


党によって大衆を組織、運動に駆り立て、
国家は単なる執行機関に堕する。
社会の不在を党によって代替し、
あるいは党を媒体に人を結びつける。
そして、カリスマをおびた独裁者が
その頂点に君臨して指導する。
その姿はあたかも新しい「中世」といった趣である。