ビデオ三昧


風邪のような鼻炎にも悩まされて、
初売りにもいかず、
オブローモフな正月。
どうにも脳みそが働かないので、
書き物や考え事を放り出して、
無心で映画を見てみる事にした。


ティム・バートン
愛情溢れる伝記映画『エド・ウッド』、
同じく伝記映画で
ハワード・ヒューズの半生を描いた『アビエイター』、
今更感漂うポッター・ハリーさんの
『アズカバンの囚人』、
年をとらない世にも奇妙なデップの
パイレーツ・オブ・カリビアン』、
神話的モチーフを折り込んだ
コメディタッチの『オー・ブラザー!』、
特撮のレイ・ハリーハウゼン
『地球へ2千万マイル』、
ヤン・デ・ボンな『ホーンティング』、
デレ抜きツンツンのみな新海誠
雲のむこう、約束の場所』、
気障で、どこまでも感傷的で、けれん味たっぷり、
くどいバターにこれでもかと砂糖をぶち込んだような
フィッツジェラルド原作の
華麗なるギャツビー』。


こうして一覧にしてみると、
我ながら暇なもので結構見ている。
特に印象に残ったのは、
エド・ウッド』と『地球へ2千万マイル』。


エド・ウッドの作品は、
チェーホフの憂鬱な短編小説に出てくる
博士のように眠れなくてフラフラしている時に
深夜番組でいくつか見たが、
(『怪物の花嫁』と『プラン9・フロム・アウタースペース』)
B級映画を愛する我輩をして、
あまりの安っぽさと出来の悪さで
ある意味強烈な印象を残した。


映画をこよなく愛しながら、
これっぽちも才能を持っていなかったエド・ウッド
アビエイター』のハワード・ヒューズとは
対極的な人物だが、
この映画を見て悲しくならない人は、
おそらく創作に興味を持たない人であろう。
エド・ウッドの強烈な人物像に、
ティム・バートンの愛情と“才能”と、
どこかピエロのような印象与える
ジョニー・デップの演技、
映画好きならずとも一見の価値はあるはず。


単純に映画の出来として感銘を受けたのが、
ハリーハウゼンの『地球へ2千万マイル』と
オー・ブラザー!』。
物語の展開のさせ方、配分が絶妙で、
いい勉強になった。
やはり娯楽物ほどセオリーがあって、
見ても考えても楽しい。
尖がった作品も好きなのだが、
純文学的なものを含めた“ジャンル”的なものというのは、
(SFや本格ミステリでさえも)論理的と言うよりはむしろ、
ある種の感覚に訴える事で支持を得ているような気がする。
「おたく」であればそうした情緒を
揺さ振る要素に「萌え」と名付けている。