あんパンなんていらない。(Ver.Teazated)


あんパンは悩んでいた。
自分が本当にパンと呼べるのかを。
本当は饅頭じゃないのか。
単にあん饅頭を焼いただけじゃないのかと。


食パンは悩んでいた。
パンの耳も食パンと言えるのか。
パンの耳のない食パンは一体何なのか。


カレーパンは悩んでいた。
カレーにアイデンティティを求めていたのに、
本当は揚げパンが自分の本性なのではないかと。
外見と中身のどちらが重要なのか、
彼は悩んでいた。


おじさんは悩んでいた。
意味も無く生まれてくる自分に
存在理由などあるのかと。
存在する必要の無い自分が作るパンたちも
やはり存在する意味など無いのではないかと。


ある日、おじさんはカレーパンに言った。
「カレーパン、お前が存在する理由など無い」
カレーパンは食パンに向かって言う。
「食パン、お前の存在は無意味だ」
食パンがあんパンを見て言う。
「あんパンなんていらない」
あんパンはおじさんに振り返って言う。
「おじさんもいらない」
そして、四者は別々の方向に別れて行った……