平均化の時代

【週末読む、観る】東大生は何読んでる?
わが国の最高学府、東京大学の学生は今、どんな本を読んでいるのだろうか。「やはりこの時期、(平成20年版が出そろった)六法や話題のミシュランガイド、そして就職関連の書籍がよく売れている」と山田宏和店長。『高学歴ワーキングプア』問題は、東大生とて他人事ではなく切実だということか。『日本の論点』を頭にたたき込んで『絶対内定』を勝ち取れば、ミシュラン3つ星で舌鼓を打てる大人になれるかも。
東大生協本郷書籍部調べ
 (11/22〜12/3)<総合>
(1)『有斐閣判例六法』
   青山善充 有斐閣 2625円
(2)『東京奇譚集
   村上春樹 新潮社 420円
(3)『ポケット六法』
   菅野和夫 有斐閣 1785円
(4)『有斐閣判例六法professional』
   青山善充ほか 有斐閣 5250円
(5)『高学歴ワーキングプア
   水月昭道 光文社 735円
(6)『ミシュランガイド東京』
   日本ミシュランタイヤ 2310円
(7)『生物と無生物のあいだ
   福岡伸一 講談社 777円
(8)『絶対内定2009』
   杉村太郎 ダイヤモンド社 1890円
(9)『日本の論点
   文芸春秋 2900円
(10)『NHKラジオ徹底トレーニング英会話CD』
    日本放送出版協会1580円


引用:http://sankei.jp.msn.com/culture/books/071208/bks0712080846004-n1.htm


良かれ悪しかれ日本には
エリート文化がほとんどなくなっており、
東大といえ今日特別な位置を占める訳ではなく、
ある程度の水準以上の大学(とその学生)になれば、
その能力の差はほとんどないのだろう。
別の国立大学や私立大学で
調査したところでおそらくは
似たり寄ったりの結果が出ると思われる。


時に願っていたはずの理想であったのに、
達成されるやそれを無かった事にしたい
と願う矛盾を我々は見かける事がある。
「大学全入」や「高校全入」は、
かつては教育の普及の名の下に
“目標”として掲げられていたにも関わらず、
いざそうならんとして慌てふためいてる。
平等の次は個性ときて、
生甲斐に疲れるとゆとりと来る。
我が国の理想や進歩は実にせわしない。


思うに未来主義者は、
本当のところ未来など
どうだってよいのだろう。
彼らにとって確実な未来が保障してくれる
現在の安寧の方が遥かに重要なのであって、
実際の進歩などどうだっていい。
懐古趣味も方向性は違うが、
本質的には似たり寄ったりであり、
いくらでも代替が利くのであろう。


平均化された時代において、
我々は距離感を見失う。
選良が居なければ下位の大衆も
また見えにくくなる。
大衆食堂や大衆酒場といった、
懐古趣味のエンターテイメントは、
今や単なる化石として嗜好されるのみである。


“現に生きている”のは、
そうしたラベリングされたものではなく、
吉野家マクドなどのファストフード、
携帯やネットの諸サービスの方こそが、
むしろ現代において大衆的であろう。
だが、かつて大衆的と看做された
大衆食堂に文化を感じる人間は多いだろうが、
果たしてマクドなどに文化を
感じられる人間はどれだけ居ようか。


大衆文化の事ばかりではない。
日本の文化の事もまた同様であろう。
武士道は素晴らしい云々は宜しい、
だが、土の子たる我輩は如何に。
能は日本文化の精緻云々も宜しい、
だが、我輩には何を言っているのか、
何が面白いのか理解できない。
それを外国人に向かって、
云々と講釈する趣味は無い。
ニコニコ動画の素人動画職人の
諸作品の方がまだしも能の如き化石よりも、
現代日本的であり、文化的であろう。


全知全能ではない以上、
自分達の文化や歴史でさえ、
知らなかったり、答えられない事があるのは、
至極当たり前の事である。
しゅんと項垂れて恥じるのは、
単に己が自尊心を傷付けたくないと欲する
さもしい根性に過ぎない。
そういう人ほど実は自信が無いもので、
自信が無いからこそ余裕も持っていない。
好きなものはしょうがないし、
利己心だって持たない人間は居ない。
一体、自信以外にそれらを素直に
受け止めてくれるものが何処にあろうか。